〇〇夫婦

【ガンマ1号vsガンマ2号】




「1号って【熟年夫婦】らしいよ」 
「……は?」 
 
 夜も深くなったころにヘド博士の本日の予定が終わり、仮眠室へ向かった後ガンマ1号が後片付けや明日の研究やテストに必要だと思われるものを用意しているとガンマ2号が入室してきた。 不貞腐れている様子なのは見て分かっていた。だが1号に対してだとは予想していなかったので間の抜けた声が出たのは当然であろう。 
 
「さっきさー、いつもみたいに休憩所にいた連中と雑談してたんだよね。そしたらさ……」 
 
『ガンマ1号さんってよくヘド博士といますよね』 
『1号は助手兼任だからねー』 
『だとしてもよ、この間のは単なる助手っていう感じじゃあなかったぜ』 
『あーあれな、俺もそこいたから覚えてるぜ』 
『何々? この間って何のこと?』 
 
 尋ねてみればどうやら先日の2号のテスト中に1号と博士のやりとりが阿吽の呼吸だったそうだ。 無駄なやりとりは一切なく、聞いているだけの兵士からすれば『あれ』『それ』という主語だけで博士からの発言を理解してタイミングよく切り返した答えをして博士を納得させる。 誰も横に入れる余地がないと感じる程だったと見たRR軍の兵士は喋った。 
 
『あーいうのは熟年夫婦みたいな関係だよな』 
 
「ボクもいるのにさー、博士の相手は1号しかいないみたいな言い方凄い傷つく」 
 
 喋りながら移動して椅子に座っていた2号は話終えると背もたれに寄りかかり頭を上に向けて溜息を吐いた。 
 
「わたしと博士が熟年夫婦か……」 
 
 言われた側の1号は意味を噛みしめて悪くないと頬を僅かばかり綻ばした。 ヘド博士に造られてまだ半年も経たない人造人間の自分が長年連れ添ったように博士に馴染んでいるという第三者視点に喜ばない理由はない。 しいて言うなら嫁側は博士になるだろうなと訂正するくらいだろう。 
 言ってくれたRR軍の兵士にはお礼を申さなければなと考えていた1号 
 
「そこでボクは考えたんだよね!」 
 
 突然の大声にビクリと体を揺らしたが顔を平常に戻して2号を見る。 
 
「1号と博士が熟年夫婦ならボクは新婚夫婦を目指そうかと!」 
 
 ガバリと椅子から立ち上がり声高々に宣言する2号 
 
「新婚といったらスキンシップ多めだったり、色んな初めてを共有する期間! まだ出来上がったばかりのボクなら『初めて』なことは山ほどあるし!! こっちの方がボクらしいと思うんだよね」 
「そ、そうか……」 
「ってことで、早速『初めて』のヘド博士に添い寝をしてこようと思う」 
「それは待て」 
 
 がっしりと2号のマントを掴みヘド博士がいる仮眠室へ向かおうとするのを阻止する1号 
 
「何で邪魔するんだよ1号、そりゃあ添い寝って言ったけど実際は寝る必要がないから博士の寝顔を堪能することになるとは思うけどそれはいいだろ」 
「まったく良くない、断固阻止させてもらう」 
「えー……じゃあ朝とかにやろうとしてた『初めてのあーん』は?」 
「阻止する」 
「起きた時にするおはようのキス……」 
「頬なら別にいいと思うが口はやめろ、博士が朝から顔を合わせなくなる可能性があるぞ」 
「なるほど……あ、一緒にお風呂で「や・め・ろ」 
 
 危うくホルスターに手が伸びそうになるのを何とか止めた1号 。大きく深呼吸して落ち着きを取り戻そうとする。 
 
「兎に角、いつも通りのスキンシップでいいだろう?」 
「それじゃあ新婚感全然ないじゃないかー」 
 
 
 結局この夜は2号からの新婚間を出す為の初めての行動提案を悉くダメ出しし、朝を迎えることになった1号であった。