【ガンマ1号2号×ヘド】
ヘド博士により造られたガンマ1号、2号 。
数々の性能テストをしてそろそろ半年を迎える頃にヘド博士は次の段階を提案しマゼンタ総帥からしぶしぶだが許可を得ることに成功した。【ガンマ達のコピーを作るための装置開発】だ。
「許可はしっかりと取ってきたし、必要な資材も確保できている。 図面はもう出来ているから後は作るだけなんだが、ボクとガンマ達で作った方が的確にやれるし早く終わるからな」
「ボク達のコピー……」
ヘド博士の話にしげしげと図面と睨めっこしながら2号が呟く。
「これが完成した次第に新しいテストも始めるからね」
「分かりました……2号、聞いていたか?」
「大丈夫、博士の言葉を聞き逃すことはないから……けど一つ質問いいですか?」
「何だい2号」
すぐ開発に着手するつもりだったので、2号からの質問に自身が気付かなかった欠陥があったのだろうかと心配するヘド博士。
「あ、装置に関してのことじゃないんです。ボク達のデータを使用するとなるとその……」
言い辛そうに一度口を閉じ、そして顔を歪ませて続きを喋る。
「ボクらの博士への気持ちも共有になるのかなぁ……って」
「っ!!」
「ライバルがたくさんできるのは嫌だなぁ……」
2号の言葉にそこまでの考えが及んでいなかった1号は目を見開いた。博士がどう返答するのか気になり1号は一挙一動見落とすまいと凝視した。
「それはあり得ないから安心しろ2号、もちろん1号もだ。」
「「……え?」」
ガンマ達は声を揃えて困惑の声を出し、ヘド博士は軽く息を吐く。
「どうせお前達はボクを監視しているシステムのハッキングなんて日常茶飯事だからこの話も漏れないだろうから答えを言うとだな……」
博士の説明では使用するデータは今までの性能テストでまとめた戦闘データと今後やる予定の実践テストのデータであり、コピーのガンマの場合は1号と2号とは違い人工知能のみで製造されたものが組み込まれる。
その意味は人の脳機能で行っていた喜怒哀楽の感情などはなく任務遂行を最優先にと簡略化された代物になるのだそうだ。
「だからお前達が不安になるようなことにはならないのさ」
「え、でもそんな劣化版みたいのを製造してどうするんです?」
「………」
2号の次の質問の答えを言う前に博士は側に置いていたミルクの入ったコップを手に取るとゴクゴク飲み始めた。半分くらい飲み干してコップを置き直し口元を拭う。
「マゼンタ総帥がさ……言うんだよ。ボクの最高傑作のガンマをもう少し融通の利く措置ができないかって」
「今のガンマが最高傑作だっていうのに自分たちの思い通りの働きをする存在に変更させろってそれってスーパーヒーローじゃないよね……だから少し痛い目でもみればいいかなってね」
ニコッと笑い「ついでに悪さしようとしたら自爆させられるようにこっそり自爆プログラムも組み込まれるように製造内容作ってあるんだー」と朗らかに話す博士 。
「ま、そんな訳でボクに好意を示してくれるガンマ達はお前達だけなので心配無用って訳さ」
「そっかー……」
「ご配慮ありがとう御座います、ヘド博士」
先程は強張っていたように見受けたが今の説明のおかげで力が抜けたように見える2人に博士も少し笑みを零す。
「……ボクの最高傑作のガンマ達はもう一個体として存在している訳だからさ、腕とか脚なら治せるけどここはもうボクでも同じとまではいかないから……無茶はしないでね」
博士は自身の頭をとんとんっと人差し指で横から軽く叩いてそう言った。
「ご安心をヘド博士」
「ボク達は博士が作った傑作のスーパーヒーローです。ちょーっとだけの無茶はあるかもだけどヒーローに負ける要素なんてないです!」
「それに……」
軽々と2号が博士を抱き合う形で持ち上げる。
「わっ」と驚きながら2号の首に腕を巻き付けようとすれば片方の手を1号がするりと持ち上げて手の甲に軽くリップ音を鳴らす。
「愛しい博士……貴方の側を離れるなんて想像できません」
「今までもこれからも末永くヘド博士の側でスーパーヒーローとして釘付けにしますから見てて下さい」
「……うん、分かったよ」
ガンマ達からの熱烈なアプローチに顔を赤らめつつ嬉しそうにするヘド博士、その姿を見て嬉しそうにするガンマ達。これが続くのだと3人は思っていた。
装置が完成するまでは一月もかからず、永遠の別れが静かに忍び寄っていた。