さんのひ

【ガンマ1号2号×ヘド+??】





「3月3日って何の日だと思う?」

 少し休もうと提案したヘド博士は休憩用にと設置しておいたソファへ移動し真ん中に座ると軽食を取りに行こうとしたガンマ1号と飲み物の準備をし始めたガンマ2号を呼び両隣に座るよう声を掛けた。勿論2人が断る選択肢があるわけはなく喜んで博士のいるソファの隣へ座れば上記の問いを出された。

「定番ですと……ひなまつりでしょうか」

 まず答えたのはガンマ1号、定番なのもそうだが先日ブルマ博士に雛人形を飾るための手伝いに駆り出された記憶が新しいのもあったのだろう。「絶対に壊さないようにね」と力加減などとうにできていたが、いざ言われ直され余計な慎重さを持って扱ったからかいつも以上にエネルギーを消費し、その日の夜に充電する際に残量を見て創造主を心配させてしまったのも相まって印象深くなったとも言える。

「ボクが思う3月3日は……」

 ガンマ2号は勿体ぶるように間を開け、自身の顎に指をあてて考えるふりをしながらヘドを横目で見る。何と答えるのだろうか気にしてこちらに顔を向け返事を待っている主を確認し、手透きになっている片腕を動かして愛しい博士の耳へ触れる。優しく触ったのがくすぐったいようで首をすくめて少し笑う彼に自らもふっと笑みが零れるのを実感する。

「耳の日ですね。あ、それに因んで耳かきの日もあるんだったな……ヘド博士、後ほどボクの膝枕でしませんか? 気持ちよくさせる自信があります!」

 自分の膝を叩いていい案を出したと満足そうににんまりとするガンマ2号にどうしようかと考える博士。しかしそこに待ったの声が入った。

「自信ならこちらも持っている。わたしが対応した方が博士は満足されるかと」

 1号も加わりどちらを選ぶのかと両隣の視線が訴えてくる。その眼差しを一身に受ける2体の創造主ははぁと溜息を吐く。

「……1号と2号とボク」
「「??」」

 彼の人の唐突な呟きの意味が分からずどう発言すべきが迷い口が開けない。そんなガンマ達を見上げるヘド博士は続ける。

「3で括ると安定するっていう考えがあるんだって。つまりボクら一緒にいるといいってことを表す日でもあるんだよ」

 言いながら横にいる彼らの袖を握り「だから最高な気持ちにキミたちはならない?」と嬉しそうな声音で尋ねられ同じ目の高さである互いを見る。

「ボクはね、最高傑作の2人といられてとーっても最高な気分だよ」

 大事と認識している相棒とそれ以上に大事だと胸を張って言える存在が身近にいるこの時間を再確認した傑作たちは頬を緩め愛しさを込めて返す。

「「同感いたします、ヘド博士」」

 耳に心地よく入ってきた合意の言葉に相づちをして博士は先ほどの答えを返した。

「ってことだから耳かきは2人でね……ちなみにボクはどっちを向けばいい? キミたち側? それとも……」
「「是非(わたし、ボク)を見ていて下さい!!」」

 食い気味な応答に目を丸くしたが吹き出して「いいよ」と笑い快く受け答えたヘド博士。その笑みをどちらも録画機能により撮っていれば聞き慣れた羽音がやってくる。

「ハチ丸」

 ヘドが指を差し出せばそこにとまるはずのハチ型サイボーグエージェントがいつもと違い無視をして3人の周りをぐるぐると何周もする。珍しい行動に不思議そうに首を傾げる博士だがどうやら機嫌がよくないのだけは理解した。

「何を怒ってるのさハチ丸」

 ヒントが欲しく声を掛ければ中心にいるドクターの頭上を回るのに変更した、今度は円状ではない。

「……なるほど」

 仰ぎ見て意を得た彼は独り言ちて両手を上げハチ丸へ向けて喋る。

「除け者にしたつもりはないよハチ丸。だってお前とボクなら一心同体みたいなものだろ」

 ヘド博士の発言に気持ちを込めハートの形状を模りながら飛んでいたサイボーグは飛ぶのを止めて今度こそ作り上げてくれた存在の手の中へ着地をした。降り立つ感触に上げていた腕を視線よりやや下へ手を下ろす主をエージェントが見上げた。

「一番近くにいてくれてる君も含めての3だよ」

 忘れておらず含まれている、それもヘドと合わせて1つとして。何とも喜ばしい回答にハチ丸は手から肩へと移り創造主の頬へスリスリと全身を使い感謝の意を込めた。

「機嫌が直ってくれて良かったよ……ね、ガン……ま?」

 満悦してくれたハチ型サイボーグに安堵し最高傑作へ同意を貰おうとすれば両隣が今度は気落ちしていた。

「ど、どうしたのさガンマ……」
「いえ……別に……」
「さすがは博士の信頼度ナンバーワン……」

 Dr.ヘドに先に作られた存在、そして助手をしているガンマ1号よりもずっと前から傍に居続け見守っている先輩に勝てる見込みなどないのだと否応なしに見せられた傑作たち。納得はしているが受け入れられないと両極端な感情をどうにか飲み込もうと暫しの時間を頂き奮闘するのだった。