【ガンマ(2号メイン)+ヘド】
『よくやったガンマ2号』
「ありがとう御座います、ヘド博士!」
『超長距離からの映像転送、戦闘時の際もフリーズすることなくスムーズに送れていた』
「ではテストは終了ですか?」
『そうだな、機能が停止したロボは後でRR軍の兵士が回収する手筈だからそのまま戻って来てくれ』
「了解しました!」
通信が終わり、黒い煙を上げる戦闘用ロボを宙に浮かび見下ろしながらガンマ2号は博士が待つRR軍用基地へと踵を返して速度を上げた。
今回はいつもの本拠地でのテストではなくそことは別のRR軍、表向きはレッド製薬所有の製薬工場予定地として登録されている軍用基地だ。 所有する基地の中でも一番本拠地から離れたところにあるこの場所で今回は遠距離から且つ戦闘時の映像転送へのテストが行われた。
勿論ヘド博士の最高傑作の片割れのガンマ2号は何なくクリアし、予定していた時刻よりも大幅に短く事を済ませた。
「……おや?」
最短ルートで向かっていた途中2号の動きが止まる。 見下ろした林というには規模の小さな木々の集合体の中に黄色の塊が緑の中でやたらと映えた。
『どうした2号』
「お、1号。ヘド博士は?」
先程の通信時はヘド博士だったというのに1号から声を掛けられ彼の人の行方を尋ねた。
『博士ならお前が戻ってきたら軽くメンテナンスする為の準備に行かれてる、戻られるまではわたしが監視役だ』
「なるほど……ねぇ1号、今ボクがいる場所ってまだRR軍の所有地なの?」
『待て今確認する……いやその辺りは他所、国有地だ」
「ふんふん、じゃあ予定よりもうんと早く終わらせたんだからちょっと寄り道したって平気だよね」
『何をどうすれば平気になるんだ。さっさと戻ってくるのが正解だろ』
「まだ視界の映像転送されてた?今ボクが止まっている理由の確認をしようかとね」
そう伝えると降りていく2号 。
「おお……これはなかなか凄いね……」
『今お前が見渡した時に見えた建物は傷んでいる箇所が多いな、大分人が住んでいないようだ』
「じゃあ大分前に捨て置かれた場所ってことか……なら……」
『何をするつもりだ2号』
「ふっふーん、博士におみやげ!」
「おかしいな……あの時間で終わって最短ルートで戻るならそろそろなのに……」
ソワソワうろうろと腕組みをしながら2号の戻りを待つ博士。
「まさか何かのトラブルが? 戦闘の感じでは圧勝していたから何も心配することはないと思っていたが見えない箇所に損傷でも……いやでも1号から何も連絡はないし……」
ブツブツと呟きながらここで悩んでいても仕方がないと判断した博士は一度部屋を出ようと動き出す。 開くためにボタンを押そうとすれば博士より早く向こう側からやってきた人物により音を立てて扉は開いた。
「ヘド博士、ガンマ2号只今戻りました」
「2号!……ガンマ2号、それは?」
「はい、おみやげの向日葵です!」
ガンマ2号が無事に戻ってきたことに安堵した博士だが両手に抱えた花々に若干の呆れを含んだ声が漏れた。
「つまりそれで戻るのが遅れたと……」
「帰る途中に目に留まったんですよ。で、降りましたら随分前に放置された植物交配の施設みたいだったらしくて、温室だっただろう場所に黄色い花とかがたくさん咲いてたんです」
「文字は掠れてて詳しくは分かりませんでしたが姿、形は似ていたので向日葵の品種だと思いますよ」と言ってヘド博士に手渡した。
「あ、ありがとう……?」
「成長途中だったら太陽をたくさん浴びるために動いているけどこれは花が咲いてしまったやつですが、ヘド博士全然日光浴びれていないし少しでも日に当たった気持ちにでもなればと……」
「博士は今ボク達のテストやあれの完成で忙しくてここを出られない日々が多いですから。ほら人って骨や歯を作るのに必要じゃないですか。当たらなければ眠気が感じにくくなるのは博士にとってはいいのかもしれないけど…..」
「陽に当たれない代わりに陽をたくさん浴びた花を」という2号の話に博士は今貰った花々を眺める。
「ヘド博士、花瓶を頂いてきました」
ガンマ1号が遅れて部屋に入ってきた。その手には確かに花瓶を持っている。博士の持つ花の量を見て1号の動きが止まり、2号にしかめた顔を向けて問う。
「2号、わたしが映像で見ていたよりも花が増えてないか?」
「あ、気付いた? 面白い形とか見たことない色のもそのあと見つけて足したんだ」
「まったくお前は……」
溜息を吐いた1号は「もう少し大きいものか個数を増やしてきます」と言って室内から出て行こうとすれば「1号」 と博士が呼び止めた。
「少し代わりに持っててくれ。2号、簡単にメンテナンスしたらお前も一緒に行くぞ」
「えと、その、博士……行くというのは……」
「花瓶探し、でその後はまだ陽があるからな……ちょっと3人で外で休憩しよう」
「あ、ボクこの前いいお昼寝スポット教えて貰ったんです! そこはどうでしょうか?」
「へぇ、ならそこで休むとしようか」
「その人と時間が被らないといいですね」
2人を待たせ過ぎない為に急ごうと博士の手がいつもより世話しなく動く。
「博士、もし機会があれば向日葵咲いてた場所見に行きませんか?」
「そうだね……それはいいかも」
「じゃあ悪の秘密組織を倒した後、平和になったら行きましょう、絶対! あ、1号も勿論来るでしょ?」
「博士が行くならお供します」
「素直に一緒に行くって言えばいいのにー」
「……なぁ1号」
「何でしょうか博士」
「2号が言っていたあの向日葵の場所はお前は知っているのか?」
「……映像を見ていたのでおおよその場所は分かると思います、距離が遠かったのでセルマックスの爆発に巻き込まれてはいないかと」
「そうか……時期が来たら見に行こうか、約束だもんね」
「……はい、お供します」