それはガンマ1号をエネルギー充電の為休ませ、ガンマ2号を連れてセルマックスのラボへ行った時に起こった。
「どした1号?」
コントロールパネルを操作しているボクの後ろで今は充電の為休眠状態のはずの1号から2号へ通信が入ったようだ。予定では自分らがここを離れる頃に目覚めるように設定していったはずなのにと操作する手を止め振り返り2号の通信のやりとりを眺める。
「え、それホントに!?」
「……2号、ガンマ1号はどうかしたのか?」
「あ、えっと……」
気まずそうにこちらを見て少し悩んでいる2号に再度声を掛ける。
「ガンマ2号、説明を」
「……ガンマ1号が不正アクセスでハッキングを受けたそうです」
「暑いな……」
セルマックスのいたラボに比べるとこの研究棟の温度が上がっていることに気付く。いつもなら自身が快適に思うくらいなのだから通常の人間であれば冷えるくらいな筈なのに今は汗が滲む。あちらこちらでバタバタと動いている科学者や兵士を横目に急ぎ足でガンマ2号を連れて自身が使用しているフロアへ向かう。エレベーターに乗り込みドアが閉まってから2号へ今通った際に聞こえた内容は何だったか尋ねる。
10分前にこの研究棟が一斉に停電した。少し手間取ったが予備電源に切り替わり、各自が行っていた研究データや培養設備などの不具合の確認、兵士たちは敵襲の可能性の為、急な各階の確認のためあの慌てようだったとのこと。
それを聞き自分達がいたセルマックスのラボは独立した電気設備だったので被害は何もなかった。だから変化に気付けなったのかと納得するが、それで1号のことがあったのかと思うと苛立ちが表に出てチッと舌打ちをしてしまう。
ようやく着いた目的のフロアもやはりドアが開けばいやな熱さを含んだ空気がボクの皮膚に纏わりつく。気にせず目的の扉を開きその奥のガンマ達が充電をするための部屋へと突き進む。
「っ! 1号!!」
充電で入っていた1号のカプセルの扉が開いている。数歩歩いて限界だったようで床に倒れている1号が目に入った。駆け寄ればよろよろと起き上がり「博士……すみません」と謝罪される。
「何で謝るんだ」
「いえ、その……ハッキングを受けた際に博士が付けて下さった機能、攻性防壁を使用したのですが休眠からの突然の起動の為に加減が出来ず……」
「あ、この停電って1号がやったのか」
ボクの後ろから1号を見下ろしていた2号が呟き、その言葉にコクリと頷く1号 。
「後で他の者やマゼンタ達が騒ぐかもしれません」
「何だそんなことか、まったく問題はないぞ」
1号の懸念を聞いてボクは気にするなと笑う。
「そもそもボクの最高傑作に手を出したんだ、先に手を出してきたからこっちは防衛したんだから文句を言われる筋合いは無い」
「やりあうならお手伝いしましょうか、ヘド博士?」
「いいや、不要だ2号。お前は1号に手を貸してやってくれ。ボクは装置の状態を確認するから隣の部屋にでも連れて行ってくれ」
ボクの指示に従い1号に肩を貸して移動した2号を確認すると側にあったパソコンを起動させた。装置の修復という名目ではなく、誰が手を出したのか調べる為だ。
組み込んでいたセキュリティ機能は相手が相当なダメージを被るように組み立ててあったもの、少し威力が強かったようで1号にまで被害が来てしまったのは誤算だった。 後で改善案を練り直そうと頭の片隅に止めておく。
予備電源で無事に稼働していれば白、未だに復旧していない場所を具に調べ、そして見つけた。その場所は確かやたらと噛みついてくるやかましい古株の老科学者が居座るところだったと思い出す。研究内容も古くさく必要性を感じない論文をしこたま書いていた……いや書かせていただったかと更に記憶を掘り起こした。
「何だ、悪じゃないか」
「ハチ丸」
呼んでやってきた優秀なサイボーグエージェントを指に止める。
「久しぶりに謎の死が必要になったぞ」
悪なら手加減はいらないな
徹底的に潰してやろうじゃないか